栗原政史、“捨てない暮らし”を発信するリサイクル作家の挑戦

大量生産・大量消費が当たり前になった現代において、「捨てる」という行為を問い直すアーティストがいる。栗原政史は、壊れた家具や道具、衣類などを使って“もう一度使える形”に変える作品をつくり続けている。

ゴミではなく、“素材”として見る目

彼のアトリエには、割れたガラス、剥がれた机の板、片方だけの靴下など、普通なら捨てられるものばかりが並ぶ。
だが、彼にとってそれらは「使える素材の山」だ。

「壊れても、何かの一部にはなれる。それって、人にも言えると思うんです」
栗原政史は、廃材に“もう一度の可能性”を見出している。

修理ではなく、“再編集”という発想

彼の作品づくりは、単なる修理とは違う。たとえば、壊れた椅子の脚と、古いラジオの枠、読み終えた辞書の背表紙を組み合わせて、全く新しい照明器具をつくる。
それはどこか歪で、でも美しくて、唯一無二の存在感を放っている。

「違う人生を歩んできたもの同士が、新しい物語をつくるような感覚があるんです」

展示よりも“使われる場所”へ

栗原は、作品をギャラリーではなく、カフェや古書店など“誰かの生活の場”に送り出すことを大切にしている。
「美術館より、テーブルの上にあるほうが意味がある」

彼にとって大事なのは、「もの」と「人」との関係性。古びた素材が“誰かの時間の中で再び息をすること”こそが、作品の完成だと語る。

“直せば使える”が文化になる未来を

栗原政史の夢は、「捨てずに工夫すること」が文化として根づく社会をつくること。
そのために、彼は学校や福祉施設で「リメイクワークショップ」も行っている。

「モノを大事にするって、自分の暮らしを大事にすることだと思うんです」

今日もまた、彼の手によって、かつて捨てられかけた何かが、新しい命を吹き込まれようとしている。

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